弱点のない身体づくり-ビタミン・ミネラルの重要性-

銀座上符メディカルクリニック

院長 上符 正志 先生

予防医学の考えのアップデート『オプティマル・ヘルス』

近年、日本でも従来の医学の範囲である「病気の治療」から一歩踏み込んで、病気にならないための「予防医学」を意識する方が増えています。そして最近になり、予防医学の考え方を更に進めた「オプティマル・ヘルス」という考え方が注目されています。病気の治療からオプティマル・ヘルスの実現まですべての段階において欠かすことのできない栄養素、それがビタミン・ミネラルです。アンチエイジング医療を実践し、最前線でご活躍されている銀座上符メディカルクリニック 院長の上符正志先生にきいてみました。

現代人はビタミン・ミネラル不足

ストレス社会に生きる私達の中で、ビタミン・ミネラルが十分に足りている人はほとんどいないといえます。ストレスにさらされると抗ストレスホルモンのコルチゾールを生産するためにビタミンCが大量に消費され、お酒を飲めば肝臓でアルコールを分解するためビタミンB群が大量に使われます。その他、普段の生活の中でビタミン・ミネラルが大量に消費される場面は数多くあります。(図参照)

一方で、土壌の枯れや化学肥料などが原因で野菜に含まれている栄養素が減少し、食事だけで十分量の栄養素を補うことは物理的に難しくなっています。つまり、現代人はビタミン・ミネラルの補給と消費量のバランスが大きく崩れ、ビタミン・ミネラルが枯渇した状態にあるのです。

代謝活動の要であるビタミン・ミネラルが不足すれば、当然病気にかかりやすくなります。しかし、健康診断ではビタミン・ミネラルの検査は行いません。実際はビタミン・ミネラル不足による原因不明の体調不良で悩まれる方が増えており、十分量のビタミン・ミネラルを摂取するだけで症状が改善する方も多くいます。

高用量でビタミン・ミネラルを摂る理由

日本の食事摂取基準は欠乏症にならないぎりぎりの量が設定されています。しかし、私達を取り囲むストレス環境を考えると、ビタミン・ミネラルの基準量は、健康な生活を営む上での必要量と大きな差があるのはあきらかです。日本のビタミンCの摂取基準は1日100mgですが、最先端の栄養学・予防医学が研究されているアメリカでは1日6000~8000mgの摂取を推奨しています。皆保険制度のないアメリカでは最高の健康状態を維持する「オプティマル・ヘルス」という考えかたが浸透しており、1人1人が最高の健康状態であれば医療費は減っていくという考えにもとづいた「ヘルシーピープル運動」によって、10年間で高齢者の要介護数は120万人減ったといわれています。日本人にとってもビタミン・ミネラルの補給は重要で、常に最高のパフォーマンスが求められるアスリートや経営者をはじめ、心身ともに健康で長生きしたいと考えている方は積極的に摂るべきでしょう。

副腎疲労にビタミン・ミネラル

副腎は、50種類のホルモンに変換されホルモンの母と言われるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)や、ストレスに対抗するコルチゾールを生産しています。現代はストレス社会といわれていますが、過剰なストレスによってコルチゾールの分泌が頻繁になると、副腎が疲弊しDHEAやコルチゾールを作ることができなくなります。この状態を「副腎疲労症候群」と言い、慢性的な疲労や不定愁訴の原因となることからアメリカを中心に注目されています。

副腎の働きを助けるために必要な栄養素がビタミンCやビタミンB群です。特に副腎中のビタミンC濃度は血中の150倍といわれており、コルチゾールの量を調整する役割を担っています。ホルモン生産を補助するビタミンBと共に補っていただきたい成分です。

(本記事はAge Management Press 30号より抜粋)

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上符 正志/うわぶ・まさし

医学博士。1960年、山口県生まれ。産業医科大学医学部卒業後、横浜市民行院、北里大学医学部救命救急センターなどで治療に携わる。その後、米ニューヨークのザ・サレーノセンターにおいてアンチエイジングの最先端技術プロジェクトを修得、日本に導入。ワールドシティ益子クリニックにてアンチエイジング外来を開設。2010年より銀座上符メディカルクリニックの院長。最近の著書は『若くて疲れ知らずの人は副腎が元気! 』マガジンハウス。

米抗加齢医学会専門医

日本抗加齢医学会専門医

日本抗加齢学会評議員

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